NDI対応 4K60P 18倍ズームレンズ搭載カメラ CIS VCC-4KNDI, DCC-4KNDI レビュー
CIS社初のNewtek NDI® に対応した4K/60P 18倍ズームレンズを搭載したBOXカメラのレビューです。これを書いている私自身開発メンバーの一人というか開発の言い出しっぺでもあるのでカメラがどのようにして出来たかを踏まえ製品のレビューをしていきます。カメラとしては2機種あり、筐体有り版のVCC-4KNDI、組込用キットモデルであるDCC-4KNDIが存在します。
■ 放送用IP、NewtekNDI®を採用
映像/音声を伝送する際には長らく同軸ケーブルを使ってきました。加工も簡単ですし繋げば使えるといった至極単純でわかりやすいものです。ただし最近になって4K/8Kの高解像度やハイフレームレートを扱うようになったときに同軸ケーブルが煩わしくなってきたという経緯があります。例えば4K解像度で同軸ケーブルを使うとなると3G-SDIで4本、もしくは12G-SDIでシールド膜が入ったゴツいものを使う必要があります。この12G-SDIが厄介でそんなに長く伸ばせないし曲げられないし高周波なので信号の減衰に注意などいろいろ欠点が出てきました。また最近はカメラに求められる機能も多く結果的にいろんな信号線を出す必要があり、カメラ製品自体はスッキリしてるのに出てくるケーブルがウジャウジャとなってくる場合が増えてきています。
そういった経緯もあり最近ではIPネットワークを使って映像/音声を扱うようになってきています。ストリーミング配信用ということでは以前からネットワークで映像/音声を送ることは出来ましたがここでは放送用のIP、つまり遅延が少なく品質の高いコンテンツを扱うことができる規格のことを指します。現在代表的なものにSMPTE ST 2110とNewtek NDI® が挙げられます。SMPTE(米国映画テレビ技術者協会)企画が本流だと思うものの規格に関する団体(AIMIS、AMWA、VSFなど)が非常に多くそれらに人的リソースをかけるのが難しいのと最低ネットワーク速度が10GE以上を要求するため初期費用もかかってしまいます。
そのようなこともありVCC-4KNDI、DCC-4KNDIはNewtek NDI®を採用しています。NDI®はNewtek社が提唱する放送用IPの一種で基本1GEの帯域で十分な高品質のコンテンツが送受信が出来る、SDKが無償で公開されており誰でもNDI®を使った開発が可能といった特徴があります。とっかかりとしては非常に魅力的です。(ただしSDKを使った製品を開発して販売するときには費用が発生しますがその辺は契約上のことなのでここではごにょごにょします、、)
NDI® には2種類のコーデックが存在し、一つはFull NDI®(Full bandwidth NDI® とも言います)というイントラフレーム圧縮で低遅延なものとNDI|HXというH.264/H.265 HEVC を使ったLong-GOPで多少遅延するものがあります。世に存在するほとんどのNDIカメラはNDI|HXであるのですが、VCC/DCC-4KNDIではもともとのカメラ画質性能を優先するためFull NDI® を採用しています。
■ VCC-4KNDI概要
VCC-4KNDIはSDI出力の4KカメラであるVCC-4KZMがベースとなっており、NDI以外の基本性能は同じで4K/60P(1080p/1080iにも対応)、18倍ズームレンズ、CIS社画像処理エンジンClairvu™搭載、HDR(HLG、BT.2100)対応になっています。他社のNDIカメラだとパンチルトにしているものが多いのですがBOXタイプとしてユーザーが好みのパンチルトデバイスを選択できるようにしています。
カメラの大きさは72mm(W) 84mm(H) 125mm(D) で重量は802gです。筐体の底面には三脚留めネジが切ってあります。前面にはタリーランプがあり、TriCasterなどNewtekNDI®でコントロールできる機種であれば動作するようになっています。レンズ先端にはフィルターがつけられるようネジが切ってあります。(49mm)
後面には放送用IPカメラとして1GEthernetのインターフェースがあります。PoE(Power on Ethernet)に対応していますので対応スイッチであればLANケーブルから給電が可能です。もちろんそういった設備が無いところでもDC電源の入力は用意しています。NDI®の出力とは別にビューファインダー用のデジタル出力があります。ATOMOS SHINOBIやBlackMagicDesignのVideoAssistなどHDMI入力を備えたモニターに繋いでモニタリングすることも可能です。(なぜHDMI出力と言わないのかはお察しください、、)このほかに3.5mmステレオミニジャックでのオーディオ入力や、旧来からのRS232Cシリアルコントロールを備えています。
カメラの設定/コントロールはWebブラウザから行うことが可能です。VCC-4KNDIのカメラ設定で解像度フォーマット、AE項目、ホワイトバランス、ノイズリダクション、ガンマ/ダイナミックレンジ設定、6軸カラー調整、レンズコントロールなど多くの項目を網羅しています。ネットワーク設定は自身のIP設定のほかNDI識別名、グループ名、TCP/UDP/マルチキャスト設定などがあります。システム設定ではログイン認証(Basic、Digest)やファームウェアアップデート、ファクトリーリセットなどが行えます。全てのブラウザで試したわけではありませんが大体は使えると思われます。
VCC/DCC-4KNDIにはCISの別モデルカメラと同じくオリジナル画像処理エンジン Clairvu™ を搭載して正確な色表現、高画質を実現しています。色調整の項目が多く、狙った通りの色に合わせることが出来ます。2D/3Dノイズリダクションも強力でゲインを上げることに躊躇することもなくなります。また標準のBT.709の他にBT.2100(HLG)のガンマカーブが選択できHDRにも対応しています。残念ながらNewtek社のスイッチャーTrCasterは現在のところHDRに対応しておりませんがHDRは受け側にその処理ができていればいいので途中で何もしなければNDI®でHDRを伝送するといったことは可能です。
カメラに対しWebブラウザ、Newtek NDI®、RS232でコントロールすることが可能ですがそれに加えRestAPIに対応しました。これによりネットワークを使ってリアルタイムに高度な制御を行うことが出来ます。URLとHTTPメソッドを使ってデバイス間の情報をやり取りするというIT業界では一般的な方法のためサーバーからのコントロールやアプリ開発が格段としやすくなります。本機では設定のほかズーム位置やフォーカス位置などの情報も取得することが出来ます。(JSONで返ってきます)
CIS VCC-4KNDI、DCC-4KNDIは従来からのCIS社テクノロジーを受け継ぎつつ放送用IPであるNewtek NDI®に対応したカメラです。単純に同軸ケーブルがLANケーブルに変わったということではなく、RestAPIに対応することでカメラをよりアクティブにコントロール、ネットワークで使用ということに関してより簡単なアプローチをユーザーに提供するカメラと考えています。
※NDI® is a registered trademark of Vizrt Group
■ 関連項目
InerBEE 2021 (国際放送機器展)
この展示会で初めてVCC-4KNDI / DCC-4KNDIを展示いたしました。
Newtek NDI®とUnreal EngineでAR/VR を作ってみた
InterBEE 2021でVCC-4KNDIの展示で行ったUnreal EngineをつかってのARデモを解説